土地の分筆と借地権について|弁護士Q&A
土地の分筆と借地権について
借地権が設定されている土地が分筆されました。家の存在しない分筆された土地について借地権を主張できますか。
契約締結後に土地が分筆された場合は分筆により建物が存在しなくなった土地について借地権を主張できます。
詳細解説
契約締結後に土地が分筆された場合
♦参考判例:最高裁昭和30年9月23日
判旨:「分筆前の宅地の全部につき借地権、――しかもその宅地の上に、登記ある建物を所有することによって第三者に対抗し得べき借地権――を持っていた被上告人は、その後分筆された右宅地の一部――右建物の存在しない部分――の所有権を取得した上告人に対しても、右借地権を対抗し得るものとした原判決の判断は正当であって論旨は理由がない。」
としています。
建物の登記の記載だけ見ると、その建物の敷地は分筆後の土地であって、分筆前の土地の借地権は公示されていないとも考えられます。
しかしながら、土地の分筆というのは基本的には地主側の都合になります。それを理由に借地権を主張できる土地の範囲が一方的に狭められることは妥当ではないという価値判断に基づき、借地人による借地権の主張を認めました。
- ただし、「第三者に対抗し得べき借地権」であることが必要です。
借地借家法10条1項:「借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる。」
とあります。つまり、借地権の登記が無くても建物の登記があれば「第三者に対抗し得べき借地権」となります。
- 建物の登記は必要になります。
契約締結前にすでに土地が分筆されている場合
♦参考判例:最高裁昭和44年12月23日
「…登記した建物をもつて土地賃借権の登記に代用する趣旨のものであるから、第三者が右建物の登記を見た場合に、その建物の登記によつてどの範囲の土地賃借権につき対抗力が生じているかを知りうるものでなければならず、当該建物の登記に敷地の表示として記載されている土地(更正登記の許される範囲においては敷地の適法な表示がされているものと扱うべきこともちろんである。)についてのみ、同条による賃借権の対抗力は生ずると解するを相当とする。」
としています。
これは、借地上の建物の登記により借地権を主張する場合、第三者が建物の登記を見た場合に、その建物の登記によってどの範囲の土地賃借権につき対抗力が生じているかを知り得るものでなければ取引の安全が守られないと考えられているためです。
契約前からそもそも分筆されている場合には、借地人もその分筆があることを認識したうえで借地契約をしているため、借地人を保護する必要性が低いため取引の安全を優先すべきと考えているようです。
この記事の監修者
弁護士
弁護士。兵庫県出身。東京大学法学部卒業。東京弁護士会所属。弁護士資格のほかマンション管理士、宅地建物取引士の資格を有する。借地非訟、建物明渡、賃料増額請求など借地権や底地権をはじめとした不動産案件や相続案件を多数請け負っている。