借地権の譲渡に地主の承諾は必要?譲渡承諾書に記載すべき内容を解説
目次
借地権の譲渡には、原則地主の承諾が必要です。(民法第612条)
この記事では、借地権の譲渡に関する地主の承諾の必要性と譲渡方法、地主が承諾しない場合の対処方法について、借地権の専門家が分かりやすく解説します。
借地権の譲渡とは
借地権の譲渡とは、借地人が持つ「土地を借りる権利(借地権)」を、売買や贈与などによって第三者へ移転させることを指します。
借地権付き建物を売却する場合が、この譲渡の典型例です。
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借地権の譲渡には、原則として地主の承諾が必要
結論から言うと、借地権の譲渡には地主の承諾が法律上必要です。
譲渡とは、売買(有償)や贈与(無償)を問わず、借地人の権利を第三者に移転させる行為全般を指します。
民法第612条では、賃借人は貸主の承諾がなければ、その権利を譲り渡したり、借りた物を又貸ししたりできないと定められています。
もし地主の承諾を得ずに借地権を無断で譲渡してしまうと、重大な契約違反に該当し、地主から借地契約を解除される可能性があります。
そうなれば、買主や譲受人との間で大きなトラブルに発展してしまいます。
そのため、借地権の譲渡を行う際は、必ず事前に地主の承諾を得る必要があります。
借地権の譲渡で「地主の承諾」が必要となるケース

借地権の譲渡で「地主の承諾」が必要となる主なケースは以下の3つです。
- 第三者への売却
- 贈与による譲渡
- 遺贈・死因贈与
- 離婚に伴う財産分与
- 賃借権の共有持分の移転
- 法人から個人、または個人から法人への名義変更
①第三者への売却
借地権付きの建物を、現在の借地人とは関係のない第三者(買主)へ売却するケースです。
地主は、新しい借主が地代をきちんと支払ってくれるか、土地を適切に使ってくれるかなどを審査したいと考えます。
この際、地主へ「譲渡承諾料(名義書換料)」を支払うのが慣例です。
②贈与による譲渡(家族・知人への無償譲渡)
法定相続によるものではなく、生前に子や孫などの親族に対して借地権を「贈与」したり「売却」したりする場合も、法律上は第三者への譲渡と見なされます。
この場合も、名義が完全に移転するため、地主の承諾が必須となります。
③遺贈・死因贈与
遺言によって特定の人物に借地権が移る「特定遺贈」や、死亡によって効力が発生する「死因贈与」は、相続とは異なり「譲渡」とみなされるため、地主の承諾が必要です。
一方で、遺産の全てまたは一定割合を遺贈する「包括遺贈」の場合は、相続と同様に承諾は不要とされています。
④離婚に伴う財産分与
離婚時の財産分与によって、夫婦の一方から他方へ借地権が移る場合も「譲渡」にあたり、地主の承諾が必要となります。
⑤賃借権の共有持分の移転
借地権を複数人で共有している場合、その共有持分の一部を第三者に移転することも「譲渡」にあたり、地主の承諾が必要となります。
⑥法人から個人、または個人から法人への名義変更
借主の名義が変わると借地契約の当事者が別人になるため、承諾が必要です。
借地権の譲渡で地主の承諾が不要なケース
借地権の譲渡で「地主の承諾」が不要なケースは、以下の通りです。
- 相続による承継
- 法人の経営者の交替
- 法人の合併
①相続による承継
借地権者(親など)が亡くなり、その法定相続人が借地権を承継する場合(相続)は、地主の承諾は原則として不要です。
これは、相続は法律上当然に権利が引き継がれるためです。
ただし、トラブルを避けるため、地主に対しては相続が発生したことや名義変更の通知を速やかに行うことが強く推奨されます。
②法人の経営者の交替
借地人が法人の場合、その会社の代表者や役員、株主が変わっても、法人格自体は同一であるため「譲渡」にはあたりません。
したがって、地主の承諾は不要です。
③法人の合併
法人の合併により借地権が他の法人へ移転する場合、これは「包括承継」とみなされるため、相続と同様に地主の承諾は不要です。
借地権の「譲渡承諾書」とは?
借地権付き物件を売却したり第三者へ引き継いだりする際に必ず登場するのが「借地権譲渡承諾書」です。
譲渡承諾書は地主(底地所有者)が、借地権を第三者へ譲渡することを正式に認める書面のことです。
借地権の売買トラブルを避けるために欠かせない重要書類であり、金融機関の融資審査でも提出を求められるケースが多くあります。
▼借地権の譲渡承諾書のひな型
借地権譲渡承諾書 |
承諾書に記載される主な内容
譲渡承諾書には、以下のような項目が一般的に盛り込まれます。
- 譲渡人(現借主)・譲受人(新借主)の氏名・住所
- 譲渡対象の借地権および建物情報(所在地・地番・構造・床面積など)
- 承諾料(名義変更料)の金額と支払い条件
- 契約条件の引継ぎに関する合意文言
- 契約書の締結日・地主の署名押印
特に承諾料の金額は交渉で変動することが多く、「土地価格の5〜10%」など地域相場が存在します。
事前に専門家へ相談しておくとトラブルを避けられます。
承諾書作成時の注意点
借地権譲渡承諾書を作成する際は、自分に不利な内容がないかなど、必ず司法書士に内容をチェックをしてもらいましょう。
承諾料だけでなく「更新料・地代の見直し」を要求されることもあるため、事前に交渉項目を把握しておくことが重要です。
地主が個人か法人かによって必要書類が変わるケースもあるため、司法書士や不動産会社にチェックしてもらうと安心です。
借地権を譲渡する流れ

借地権を譲渡する流れと手順は、以下の通りです。
- 不動産査定をする
- 借地権専門の業者に相談する
- 地主への交渉をおこなう
- 売買契約の締結
- 借地権譲渡承諾書の取り交わしと承諾料の支払い
- 所有権移転登記
step1.不動産査定をする
はじめに、借地権付き建物の売却査定を不動産会社に依頼します。
借地権の査定額は不動産会社によって異なる場合があるため、適正な市場価格を把握するうえでも、複数社に依頼することをおすすめします。
とはいえ、査定価格が最も高ければ良いというわけではありません。
もちろん価格が高ければ得られる利益も大きくなりますが、相場からかけ離れた高値では、買い手がなかなか見つからないという事態になりかねません。
さらに、不動産の取引では、売り出し価格に対して買主から価格交渉(指値交渉)が入るのが一般的です。
まずは、あくまでも客観的な相場価格を把握することを目的に査定を依頼しましょう。
step2.借地権専門の業者に相談する
借地権は権利関係や法律が複雑なため、取り扱い経験の少ない不動産会社も少なくありません。
そのため、借地権の取引に精通した専門の不動産会社を選ぶことが、成功の鍵となります。
後々、最も重要となる地主との交渉は、借地人だけでなく不動産会社にもサポートしてもらいながら進めるため、豊富な経験や交渉のノウハウが求められるのです。
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step3.地主への交渉をおこなう
借地権専門の業者と共に、地主への交渉を行います。
当事者だけで地主と交渉しようとすると、感情的になったり、そもそも譲渡に承諾してもらえなかったりするなど、かえって関係が悪化し、今後のやり取りに支障をきたす可能性も高まります。
しかし、経験豊富な借地権の専門業者に依頼すれば、双方にとって公平な第三者の立場で仲介してくれるため、交渉が円滑に進む可能性が高まります。
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step4.売買契約の締結
買主が決まった後は、売主として買主と売買契約を締結します。
この売買契約の時点では、まだ売買代金の全額を受け取ることはできず、後日の決済時に残代金を受け取るのが一般的ですので注意してください。
また、売買契約時には不動産会社に支払う仲介手数料と、契約書に貼付する収入印紙を用意する必要があります。
仲介手数料は、売買代金が400万円を超える場合、
| (売買代金 × 3% + 6万円) + 消費税 |
で計算されます。
仲介手数料は法律上の上限額であり、売主と買主でどのように負担するかは交渉によりますが、事前に不動産会社へ確認しておきましょう。
また、契約書に貼付する収入印紙の金額は、売買代金によって以下の表の通り決まっています。
| 契約金額 | 本則税率 | 軽減税率※ |
| 10万円を超え 50万円以下のもの | 400円 | 200円 |
| 50万円を超え 100万円以下のもの | 1千円 | 500円 |
| 100万円を超え 500万円以下のもの | 2千円 | 1千円 |
| 500万円を超え 1千万円以下のもの | 1万円 | 5千円 |
| 1千万円を超え 5千万円以下のもの | 2万円 | 1万円 |
収入印紙は、不動産会社が立て替えてくれるケースと自身で用意するケースがあります。
二重に購入してしまうことのないよう、事前に不動産会社と打ち合わせておくことをおすすめします。
step5.借地権譲渡承諾書の取り交わしと承諾料の支払い
地主と借地権譲渡承諾書を取り交わします。
譲渡承諾書は、その名の通り地主が借地権の譲渡に承諾したことを証明する重要な書類です。
買主からすれば、地主から正式に譲渡の承諾を得ているかどうかが最も重要なため、この借地権譲渡承諾書を提示する必要があります。
書類は不動産会社が作成してくれるのが一般的なので、借地人は署名・捺印の準備をしておきましょう。
一般的には売買契約後に地主の承諾を得るケースが多いですが、事前に承諾を得ていても問題ありません。
なお、承諾する見返りとして、地主から譲渡承諾料(名義変更料とも呼ばれます)を請求されることが一般的です。
譲渡承諾料の相場は、借地権価格(更地価格の6〜7割程度)の10%前後とされています。
いつまでに、誰が支払うのかを明確に確認しておきましょう。
step6.所有権移転登記
売買代金の決済が完了した後、所有権移転登記の手続きを司法書士に依頼して行います。
司法書士は不動産会社が紹介してくれるため、ご自身で手配する必要はほとんどありません。
また、所有権移転登記の費用は、一般的に買主が負担します。
売主としては、司法書士の指示に従い、実印や印鑑証明書などの必要書類を準備しましょう。
所有権移転登記が完了すれば、譲渡の一連の手続きは終了となります。
借地権の譲渡を地主が承諾しない場合、「借地非訟」を検討する

借地権を譲渡する流れについて紹介しましたが、そもそも地主が承諾しないケースも考えられます。
地主としては「新たな借地人と契約するのは面倒」と捉える人も多いためです。
そのような場合、「借地非訟(しゃくちひしょう)」によって解決できる可能性があります。
借地非訟とは
借地非訟とは、地主が借地権の譲渡や建て替えなどを承諾しない場合に、借地人の申立てによって、裁判所が地主の承諾に代わる許可を与える法的な手続きのことです。
借地借家法に基づいた正当な権利であり、借地人を保護するための制度です。
これにより、地主の不合理な反対によって借地人が身動きが取れなくなる事態を防ぐことができます。
借地非訟が可能となる条件
借地非訟が可能となる条件は、主に以下の通りです。
- 譲渡(引き渡し)を無断で行う前であること
- 譲渡の相手が決まっていること
- 借地上に有効な建物が存在すること
借地非訟が可能となる条件①:譲渡(引き渡し)を無断で行う前であること
借地非訟を申し立てるには、地主の承諾を得ずに譲渡を完了させてしまう前であることが絶対条件です。
ここでの譲渡完了とは、建物の引き渡しや所有権移転登記を指します。
例えば、地主に無断で売買契約を締結し、所有権移転登記まで完了させた後には、借地非訟を申し立てることはできません。
借地非訟が可能となる条件②:譲渡の相手が決まっていること
借地非訟は、既に譲渡先(買主)が決まっていることが条件です。
譲渡先が誰か分からない状態では、地主にとって地代の支払いが滞るなどの不利益が生じる可能性があるためです。
そのため、先に裁判所から承諾の許可を得てから買主を探す、ということはできません。
借地非訟が可能となる条件③:借地上に有効な建物が存在すること
借地上に建物が存在しなければ、借地非訟はできません。
借地権だけの売買について、裁判所に承諾を申し立てても許可されることはありません。
また、建物の建て替えをしようと地主の承諾を得て解体したものの、その後、融資が下りずに譲渡せざるを得ない状況になったとしても、建物がない以上、100%借地非訟ができるとは限りません。
あくまで借地上に社会通念上、建物として利用できるものが存在することが条件であるため、建て替えなどをする際は計画的に進める必要があります。
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借地非訟の流れ
借地訴訟の手続は、以下の流れで行います。
- 申立て
- 事件の審理
- 事件の終了
step1.申立て
申立ては、借地権のある土地を管轄する地方裁判所にて行います。
裁判所のホームページから申立書をダウンロードし、必要事項を記載します。
記載内容は専門的で複雑なうえ、代理人になれるのは弁護士のみと定められているため、弁護士に相談しながら申立てを行うことを強くおすすめします。
申立書を裁判所に提出した後、書記官が提出書類を点検し、問題がなければ受付票が交付されます。
なお、申立書の他に必要な書類は以下の通りです。
- 土地および建物の登記事項証明書(登記簿謄本)
- 土地および建物の固定資産評価証明書(原本)
- 対象不動産の住宅地図
- 賃貸借契約書の写し
- 委任状(弁護士に委任する場合)
また、申立をするには手数料を収入印紙で納付しなければいけません。
手数料は借地非訟の申立て内容に異なり、借地権の譲渡の場合は「増改築許可申立事件以外の申立手数料」に該当し、以下の計算式で算出します。
| 借地の範囲が当該土地全部のとき | 固定資産評価額÷2 |
| 借地の範囲が当該土地のうちの一部のとき | 固定資産評価額×借地が占める割合÷2 |
| 目的物の価格 (算定の基礎となる額) | 申立手数料の目安額 |
| 500万円 | 12,000円 |
| 1,000万円 | 20,000円 |
| 1,500万円 | 26,000円 |
| 2,000万円 | 32,000円 |
| 2,500万円 | 38,000円 |
| 3,000万円 | 44,000円 |
| 3,500万円 | 50,000円 |
| 4,000万円 | 56,000円 |
| 4,500万円 | 62,000円 |
| 5,000万円 | 68,000円 |
引用元 第3 費用 | 裁判所 (courts.go.jp)
ただし、上記の手数料はあくまで目安であり、裁判所によって算定基準が異なることがあるため、正確な申立手数料については管轄の裁判所に確認しましょう。
また、申立手数料とは別に、裁判所からの書類送付費用として、郵便切手(予納郵券)を納める必要があります。
step2.事件の審理
申立てが完了した後、おおむね1か月から1か月半後に第1回審問期日が指定され、裁判官が当事者双方から直接話を聴く手続きが始まります。
地主側も、申立てに対する意見を記した答弁書を提出することになります。
当日は、当事者がそれぞれの意見を裁判官に伝え、必要に応じて証拠書類を提出して説明します。
当事者の主張・立証が出揃った後、裁判官が様々な事情を考慮して決定を下します。
しかし、第1回の審問で内容がまとまらなければ、第2回、第3回と期日を重ねていくことになります。
審理の途中で和解が成立し、申立てを取り下げるケースも少なくありません。
step3.事件の終了
事件の審理を経て、裁判所が譲渡を認める「許可決定」を出した場合、借地人は借地権を譲渡することが可能になります。
一方で、申立て中に地主との間で和解が成立した場合は、申立て自体を取り下げて終了となります。
許可決定に対して不服がある場合、地主は告知を受けた日から2週間以内に「即時抗告」という不服申立てを高等裁判所に行うことが可能です。
裁判所の判断基準
裁判所は、借地権を第三者に譲渡しても、地主に著しい不利益となる恐れがないと判断した場合、譲渡承諾料の支払いを条件として許可決定を下すことが一般的です。
一方で、借地権の契約期間の残りがわずかである場合や、建物が著しく老朽化して居住できる状態でない場合などは、地主にとって不利益になる可能性が高いため、認められないことがあります。
裁判所の判断基準は法律で明確に定められているわけではありませんが、一貫して「地主にとって不利益になるかどうか」が重要なポイントになります。
また、裁判所が定める承諾料は、一般的に借地権価格(更地の6〜7割)の10%程度が相場とされていますが、指定された期限までに支払えない場合は、許可決定の効力が失われるため注意が必要です。
借地非訟にかかる期間
地主からの即時抗告がなければ、裁判所の決定は告知から2週間で確定します。
地主も裁判所の決定に納得している場合は、借地人が定められた承諾料を支払うことで、法的に借地権の譲渡が承認されたことになります。
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借地権の譲渡は、原則として地主の承諾が必要不可欠です。
万が一、地主への承諾が得られない場合、裁判所に借地非訟を行うことになります。
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さらに、借地権専門の社内弁護士が常駐しているため、常に法的な問題をクリアしながらお手続きを進めてまいります。
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借地権の譲渡に関してよくあるご質問
借地権の譲渡に関してよくあるご質問と、その回答をいくつかご紹介します。
Q.譲渡承諾の条件として、「一戸建てを建てる者にしか譲渡は認めない」などの制限を付けることは認められますか?
A.結論として、地主が一方的にそのような譲渡の条件を付けることは、原則として認められません。
借地人は、法令の制限内で土地を自由に利用する権利を持っています。
もちろん、地主の意向を無視して良いわけではありませんが、法的にそのような条件を受け入れる義務はありません。
どうしても話がまとまらない場合は、公平な第三者である借地権の専門家を間に入れて、粘り強く交渉していくことが重要です。
Q. 承諾書なしで譲渡したらどうなりますか?
A. 地主の承諾を得ずに借地権を第三者に譲渡することは、借地借家法において契約違反と見なされます。
承諾書なしでの譲渡は、高確率で法的なトラブルに発展します。
借地権を譲渡する際は、必ず事前に地主に対して書面で承諾を求め、承諾が得られない場合は裁判所への借地非訟手続き(譲渡許可の申立て)に進むのが、最も安全で法的に正しい手順です。
Q. 承諾書は誰が作成すべきですか?
A. 地主側が用意する場合と、借地人側が用意する場合がありますが、専門家(司法書士や不動産会社)に依頼するのが安全です。
| 作成者 | 特徴 | メリット・デメリット |
| A. 地主 (または地主側の専門家) | 地主が主導権を握り、文面や条件(特に承諾料)を提示するパターン。 | 地主の意向が反映されやすいため、その後の合意形成がスムーズなことが多い。 しかし、借地人にとって不利な条件が含まれる可能性もある。 |
| B. 借地権者 (または借地権者側の専門家) | 借地人が売却を急いでおり、迅速な対応を望む場合に、雛形を作成し地主に提示するパターン。 | 迅速に手続きを進められる。 しかし、地主が内容を細かくチェックし、修正や追加条件を求められることが多い。 |
| C. 不動産仲介業者 または司法書士 | 譲渡の仲介に入っている専門家が、中立的な立場で作成するパターン。最もトラブルが少ない推奨ルート。 | 地主・借地権者の双方の意見を聞き、法的に問題のない、公平な文面を作成できる。 複雑な特約事項を盛り込む際も安心。 |
Q.譲渡承諾料の相場はいくらですか?支払いを拒否できますか?
A.譲渡承諾料の明確な法的基準はありませんが、実務上の相場は「借地権価格の10%程度」とされています。
借地権価格は、更地価格のおおむね60%~70%で評価されるのが一般的です。
これはあくまで慣習であり、当事者間の合意によって決まるため、交渉の余地はあります。
ただし、承諾料の支払いを完全に拒否することは、交渉を著しく困難にするため現実的ではありません。
地主が譲渡を承諾するという、本来であれば不要な手続きに応じることへの対価という側面があるため、ある程度の支払いは必要と考えるのが妥当です。
Q.借地権の「譲渡」と「転貸」の違いは何ですか?
A.「譲渡」と「転貸」はどちらも地主の承諾が必要ですが、権利の内容が異なります。
「譲渡」は、借地権そのものを第三者に売り渡したり、贈与したりして、借地人としての地位を完全に移転させることです。
一方、「転貸」は、借地人としての地位は維持したまま、借地上の建物を第三者に貸し出す行為(又貸し)を指します。
どちらも無断で行うと契約解除の重大な理由となるため、必ず事前に地主の承諾を得るようにしてください。
この記事の監修者
弁護士
弁護士。東京弁護士会所属。常に悩みに寄り添いながら話を聞く弁護方針で借地非訟手続きや建物買取請求権の行使など今社会問題化しつつある借地権トラブル案件を多数の解決し、当社の顧客からも絶大な信頼を得ている。